ホンダ・ピープルの特徴とは?

ホンダ・ピープルとは1984年ホンダから発売されたモペット、つまり原動機付自転車です。
現在では電動アシスト自転車がかなり普及していますが、こちらは「自転車のようなバイク」です。
時代を先取りするような形で登場したものの、当時としてはあまりに斬新なデザイン・仕様ゆえに十分な評価が得られませんでした。

そんなホンダ・ピープルの特徴は、やはり「自転車+バイク」というモペットならではのデザインです。
乗るときにはペダルを漕ぎながら手元にあるスイッチを操作する必要があり、スロットルは親指で操作するレバー式となっていました。
そしてエンジンはわずか0.7馬力で、この非力なエンジンが運転者の走行をサポートする形をとるわけです。

このホンダ・ピープルが発売された当時には、すでにスクータータイプの原付きが広く普及していました。
そんな状況下で、「まるで自転車」なホンダ・ピープルの発売はかなり話題になりました。
しかし、その評価はよく言えば斬新、身も蓋もない言い方をすれば「ちょっと変な自転車」といったものでした。
この1馬力にも届かないエンジンの非力さからも、あくまでエンジンは運転の補助のためにもので、この点からも電動アシスト自転車の先駆けと言えるかも知れません。

そもそもどうして作られた?その経緯について

どうしてホンダはこのホンダ・ピープルを開発・販売したのでしょうか。
その理由として、高齢・女性をターゲティングにしていた点があります。
当時はまだバイクと言えば男性の乗り物とのイメージが強かったため、より親しみやすいデザインと扱いやすい操作性を持つモデルを市場に投入することで、高齢・女性層をバイク市場に取り込む狙いがあったと言われています。

自転車のようなデザインとなったのも、自転車には乗るけれどもバイクには馴染みのない層を取り込もうとしていた意図を見ることができそうです。
「ビープル(人間)」という名称も、より幅広い層にアピールする意図と親しみやすさを意識したものだったのかも知れません。

さらに開発に至った経緯として、ホンダそのものの歴史が関わっています。
現在でこそ世界に名だたる自動車・バイクメーカーとして知られていますが、もともとは自転車用後付けエンジンの開発・製造からその歴史をスタートさせています。
ですから、このホンダ・ピープルはまさにホンダの原点にかえって製造されたバイクとも言えるわけです。

実際のところ、発売された1984年の時点でこのホンダ・ピープルは「時代錯誤」との見方がありました。
そんな中で製造・販売に踏み切った背景として、当時取りざたされていた法改正の議論があったと考えられています。
このピープルのようなモペットが普通の自電車と同じように免許なしで乗ることができるように法改正するのではないか、との噂があったのです。

結果的にこの法改正は実現せず、ホンダとしては狙いが外れた形となりました。
電動アシスト付き自転車の普及もあって改めて脚光を浴びている面もあるこのピープルは、ホンダが産んだ「迷車」としてなかなかおもしろい立ち位置にあるとも言えそうです。

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