スズキSW-1の特徴とは?

スズキSW-1は1992年に発売されたバイクで、現在の視点で見ると非常に印象的なデザインをしているのが大きな特徴です。
スリムで洗練されたデザインが主流になっている現代からするとこのスズキSW-1のフルカバーボディは非常にユニークに見えますし、「かわいい」と感じる方も多いかも知れません。
その意味では、世に出るのがちょっと早かったバイクと言えるかも知れません。

そもそもこのSW-1が登場した1992年の段階でこのデザインは懐古的な面を持ち合わせていると評価されており、あえて「古いけど新しい」路線を狙ったとも言えそうです。
このユニークな面は当時決してマイナスな評価を受けていたわけではなく、その証拠に1992年度のグッドデザイン賞も受賞しています。
なお、このSW-1の名称はスズキ(SUZUKI)とウォータースタジオ(WATERSTUDIO)の共同開発によって開発されたためで、両方の頭文字を取って「SW」と名付けられました。

このモデルの魅力・特徴は、デザインだけに留まらずさまざまな工夫が凝らされていました。
荷物をスムーズに収納できるメットインスペース、靴を傷めにくい使い勝手の良さが追求されたシーソー式シフトペダルなどはとくに高い評価を得ています。
このようにオリジナリティと機能性の両方を備えた「売れる要素」をたっぷりと備えていたはずのSW-1ですが、実際にはなかなか売れず、なんと発売開始からわずか半年ほどで生産が終了しました。
その年のグッドデザイン賞を受賞していながらその年のうちに生産が終了してしまうという、かなり残念なモデルとなってしまったわけです。

このバイクが作られた経緯について

どうしてこのような個性的なバイクが作られたのかというと、その背景には当時のバイク市場の動向だけでなく、社会一般の動向も深く関わっています。
まずバイク市場では、デザイン性が重視されていた面が挙げられます。
スズキと共同開発した相手のウォーターデザインとは、バイクメーカーではデザイン会社で、魅力的なデザインもこのデザイン会社の坂井直樹氏が担当しています。
各メーカー間で激しい競争が繰り広げられていた当時のバイク市場において、個性的なデザインで差別化を図ろうとしていた意図が見て取れます。

そして当時の社会一般の傾向として、レトロなデザインがもてはやされていた点が挙げられます。
2010年代以降もレトロブームが見られますが、当時も似たような状況にありました。
その事情をうかがわせるのが、このSW-1が市販にいたった経緯です。

じつはもともと1989年のモーターショーで披露されたものが評判となり、最終的に3年後に市販化される経緯を辿っています。
当時のレトロブームに後押しされる形で市販化が決定されたものの、価格の高さもあって思ったように売れなかった、そんな当時の時代背景に翻弄された面を持ったバイクだったのです。

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